コンパクトの”C”はチャレンジの”C” ボルボコンパクトの系譜

クルマを見る目は、人によって違います。

単なる移動の手段として考える人もいれば、家族のように愛し、何万キロも共に過ごす人もいます。

もちろんメーカーとしてはクルマを愛してもらい、また自社のクルマに買い換えて欲しい。その為には、魅力のあるクルマを作らなければなりません。

今回は、ボルボのコンパクトカーの歴史を振り返ります。ボルボのコンパクトカーは、チャレンジを繰り返して他社にない魅力を携えた、乗る人を惹きつけるクルマでした。

volvo-compact-family-tree
黄色のフィールドが小型車ゾーン

この図は最近のコンパクトボルボのファミリー図です。

流石に私の記憶にないクルマは割愛していますが、VOLVO 400から始まるコンパクトカーの歴史は当初からチャレンジングなクルマ作りでした。この記事ではVOLVO S40から始まりますが、その前のクルマから振り返るのも面白いかもしれませんね。

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VOLVO S40/V40

VOLVO S40gen1
出典:Volvo Car Group Global Media Newsroom

ボルボS40/V40は、オランダのネッドカー事業の中で生まれました。

ネッドカーは、ボルボと三菱自動車、オランダ政府の合弁事業でしたが、もともとはボルボが買収したオランダの自動車製造会社です。ここでボルボはVOLVO 440/460を製造していました。ボルボS40は三菱カリスマとの兄弟車として製造。デザインは四角いボルボではなく、当時のトレンドに沿った丸みを帯びたもの。

このクルマのチャレンジポイントは、ボルボとしては初となる他社メーカー車との兄弟車であることです。

オランダのネッドカーを買収したボルボは、そこで440/460の製造を行なっていましたが、工場の閉鎖を考え始めます。自国唯一の自動車工場が無くなってはならないと、オランダ政府が介入。ネッドカーは三菱、オランダ政府が資本参加し、存続することになります。そこでS40/V40を製造することとなりますが、当時すでに高級車を扱うメーカーと認知され始めていたボルボにとって、三菱との合弁は良いことばかりではありませんでした。

特にヨーロッパでは品質を疑う声があがります。三菱自動車のクルマに比べ50%は高い値付けがされていたボルボは、新しいS40/V40が今までのボルボの品質で作られている、エグゼクティブカーであることをアピールして販売。しかし高い性能とは裏腹に、販売で成功したクルマとはならなかったようです。しばらくしてネッドカー事業から撤退し、資本は三菱自動車へ売却します。

フォードグループへの売却の遠因であることに間違いはないでしょう。

性能としては兄弟車である事以外でも、ユーロNCAPの4つ星を最初に取得したクルマであることが挙げられます。ボルボのコンパクトカーとは言え、安全性能に妥協は許されません。インフレータブルカーテンエアバッグ、デュアルモードエアバッグなどもマイナーチェンジ時に搭載。コンパクトで安全なクルマを作る、ボルボの技術力向上の下地にもなりました。

ボルボ S40 諸元
サイズ4,470 x 1,720 x 1,410
サスペンション前後ストラット/マルチリンク
エンジン200ps 300Nm(T4)

 

VOLVO S40/V50

V50と高ソメキャンプ場
自然に溶け込むパッションレッドのV50

ボルボS40/V50は、ボルボP1プラットフォームで作成されるコンパクトカーです。

多くの方がご存知かと思いますが、このプラットフォームを使い、フォードフォーカスやマツダアクセラが作られています。スウェーデンのボルボより自動車部門のみをフォードへ売却されますが、プラットフォームの共用があるとしても独自の世界観での自動車開発を続けています。

定評のあったリアのマルチリンクサスペンションは、マツダの設計によるもの。踏ん張り感があって滑らかに動くこのサスペンションに、マツダの技術力を感じます。

ヨーロピアンスタイルが好印象の2代目S40は、インテリアの作り込みのいいクルマで、北欧チェーアのようなデザインの特徴的な「フリーフローティングセンタースタック」を装備。その裏側には小さな小物入れがあり、よく使うけれども車内に放っておきたくはない、でもトンネルコンソールに入れるのは嫌だと言う贅沢な悩みを解消するものでした。

ボルボ フローティングコンソール
北欧チェアーのようなコンソールパネル
出典:Volvo Car Group Global Media Newsroom

このクルマのチャレンジポイントは、コンパクトカーであるにも関わらず当時のフラッグシップカーS80をも凌ぐ安全性能。さらに、横幅1750mmと5ナンバープラスアルファであるにも関わらず、2.4リッター5気筒エンジンを搭載したことです。このエンジン上級車にも扱われている5気筒、6気筒エンジンと共用のもので、小さいなりにもしっかりとした高級車として作られていることがわかります。今は古い考え方になりつつありますが、マルチシリンダーは高級車の証でした。独特のエンジン音を出す5気筒エンジンは、ボルボの特徴のひとつ。ですが、環境問題を考えてあっさりと捨ててしまいます。これもすごいことですね。

また、日本での輸入モデルとしては初となる、超ー低排出ガス車(三つ星)の認定をうけたクルマでもあります。どのような時代も、安全性能、環境性能に妥協をしないメーカーだと言えるでしょう。

モデルサイクル後半では、5気筒エンジンから4気筒エンジンに徐々にシフト。さらなる低燃費を実現しています。

ボルボ V50 諸元
サイズ4,510 x 1,770 x 1,450
サスペンション前後ストラット/マルチリンク
エンジン230ps / 320Nm(2.5 T5)

VOLVO C30

VOLVO C30
出典:Volvo Car Group Global Media Newsroom

ボルボC30は、S40/V50と同じボディで作られたコンパクトカー。

最大の特徴は2ドアなことで、プレミアムハッチバック、もしくはクーペとして販売しています。名車 P1800ESをモチーフにデザインされ、今に続くリアハッチゲートのデザインを持ち合わせています。

このクルマのチャレンジポイントは、その自動車デザインとしか言いようがありません。

S40よりも小さなC30は、リアにむかって絞り込まれるボディラインが特徴的で、そのデザインのおかげで後部座席はミニマムになっています。ところが狭いながらも快適性を維持できるようにと、リアシートを中央寄りに設置。フロントシートの間から前方が見えやすい構造を持っている他、側面衝突にも対応。さすがボルボです。

ポールスターによるレース参戦、電気自動車の開発など、技術開発のベースとして使われることの多いクルマでした。子育てが済んだ世代や若者をターゲットとしていた為、300万円以下から始まる価格設定、S40/V50と共通のおしゃれなインテリアデザインもさることながら、小さいサイズに高プレッシャーターボを搭載した230ps5気筒エンジンを搭載したモデルもあり、小さいなりに満足度の高いクルマと言えるでしょう。

ボルボ C30 諸元
サイズ4,250 x 1,780 x 1,430
サスペンション前後ストラット/マルチリンク
エンジン230ps 320Nm(T5)

VOLVO C70

2008年発行 瑛出版社 北欧スタイル No15より

ボルボC70は、S40/V50と同じコンポーネントで作られたオープンカー。

C70は2世代存在し、初代はV70などのミディアムクラスをベースとしたクーペ/カブリオレでした。2代目はコンパクトクラスをベースにしていますが、名前は70を受け継いでいます。

チャレンジポイント、などと語る必要のないオープントップ。大柄になりがちなオープンカーを、コンパクトベースで作ったボルボに拍手です。おしゃれな内装が丸見えなのもイカスポイントですね!

華麗なボディシルエット、メタルトップを持ちあわせていますが、オープンカーといえども安全性能に妥協をしません。横転時に頭部の損傷を受けないように、オープンカーとしては世界で初めて、インフレータブルカーテンエアバッグを装備。火薬を使用した爆発で従来よりも展開が早いのも特徴です。

その他の性能は兄弟車と同じなので割愛しますが、そもそも性能を語る車ではありません。オープン化によって車重の増えたボディで、どっしりとした走りとオープンエアを楽しむ。車好きなら一度は体験したいオープンカーが、ボルボによって作られていたのです。

VOLVO V40

パーキングエリアで一休みのV40
どこから見てもかっこいいボルボV40

ボルボ C30/S40/V50 これらすべてを1つにまとめたのが、V40と言えるでしょう。

S40のようにしっかり5人が座れ、V50ほどではありませんが荷物を載せられ、C30のようにデザイン優先でありながらもクルマの性能をそぎ落とすわけでない。デザインに妥協はしないが性能にも妥協しない、そんなクルマが2代目V40です。

このブログでも散々登場するV40。プラットフォームは先代S40/V50とおなじボルボP1プラットフォームです。前後して吉利汽車による買収を受け、新しいプラットフォームの開発や新エンジン群「Drive-E」の開発を行います。

チャレンジポイントといえば、やはり3車種を統合したことにあります。ボディの違う3つの車種を持つ顧客を、ひとつのクルマへ誘導する。形状違いのちょっとした不満も、優れたセンスで吹き飛ばしてしまう。我々に自動車ライフは任せておけばいい。そう言っているようです。

朝日を浴びるV40
こんなにも美しいボルボ

 

アーバンショートワゴンという、ハッチバックではないよ、ワゴンですよと若干こじつけに感じる宣伝文句も、実車を見ると頷けます。太く大きなDによる野暮ったさは感じず、大きく張り出したショルダーラインを独特のリアランプ類と3D形状で統合します。クルマのデザインの手本になることを、いつもボルボはやってしまいます。

歩行者用エアバッグ搭載もひとつのポイントです。独特のフロント形状によってぶつかってしまった相手をボンネット上へ誘導、ショックを和らげつつ、フロントガラスに頭を当てることを防ぎます。

そしてS40から受け継がれるのは、その時代の最新の安全デバイスを装備すること。シティセーフティ(自動ブレーキ)やブラインドスポットインフォメーションBLISなど、安全装備に上も下もない良心がボルボ。そこに高級車なのか入門車なのかという垣根は存在しません。

日本でも注ぎ込まれた性能が評価され、カーオブザイヤーインポートを受賞。実力は証明済み。

ボルボ V40 諸元
サイズ4,370 x 1,800 x 1,440
サスペンション前後ストラット/マルチリンク
エンジン190ps 400Nm(D4)

VOLVO XC40

XC40前左側
新しいボルボを感じさせるXC40

XC60によるSUV成功を受け開発された、ボルボXC40。日本でもカーオブザイヤーを受賞し大絶賛なモデルです。

CMAという小型車専用のプラットフォームで開発されたSUVは明らかに洗練されており、乗ってすぐにわかる良いクルマっぷりはボルボの実力を感じます。

チャレンジポイントは、V40と同じく優秀なデザイン。SPAプラットフォームの60シリーズ、90シリーズとは間違いなく別方向にベクトルを向けているデザインは、果たしてXC40だけのものなのか、次期V40にも採用されるのか。いままでボルボのデザインは他社メーカーに真似され続けてきましたが、今度ばかりはデザインを盗むのは難しいでしょう。日本のゴテゴテしているSUVのデザインを一蹴する、遊び心があるのにクリーンで清潔なデザインは素晴らしい

XC40のコックピット
美しさに遊び心も散りばめられたXC40

一方でボルボ独特のどっしり感は薄れてきています。クルマが洗練されることには関係なく、ボルボは地面を踏みしめて走る重厚感がありました。XC60までは確かにあった。しかしXC40はかなりの軽快感。この味付け変更のターニングポイントが、XC40であったと将来言われる気がします。

しかし、自動車評論家をメロメロにして堂々のカーオブザイヤーを受賞。ルール変更に伴い、日本車と同じ土俵で戦うこととなったXC60、XC40ですが、見事にカーオブザイヤーを受賞している他、海外でも数多くの受賞歴があります。

意外と知られていなかったボルボを有名にしたクルマ、とも言えるかもしれません。

ボルボ XC40 諸元
サイズ4,425 x 1,875 x 1,660
サスペンション前後ストラット/マルチリンク
エンジン252ps 350Nm(T5)

次期コンパクト

V40コンセプトの予想CG

とここまで振り返ってみると、各モデルには世間にはないチャレンジを行なってきた歴史がありました。

当然それはシークレットで動いており、世間には事前に知らされることはありません。ひとつ言えるのは、クロスオーバーSUVクーペで登場すると発言されていること。背の高いXC40と競合しない、なだらかなルーフラインを持つSUVが登場すると言われています。

しかしそれはV40の正式な後継車種ではなく、まったく別物として開発されているようです。まずはクロスオーバーSUVクーペ、そのあとにコンパクトセダン/ワゴンとなるのでしょうか。

そしてデザインテイストはXC40に似たものになるのか。楽しみで仕方がありません。

中型車用プラットフォーム「SPA」で作られたクルマは、XC90、S90、V90、XC60、V60、S60と6車種に登りますが、コンパクトは「XC40」のひとつだけ。そして低燃費で量販が見込まれるコンパクトカーの発売は急務です。でなければ、欧州排ガス規制をクリアーすることは難しいでしょう。

そろそろ新しいボルボが見たい。自動車ショーでの発表が待ち遠しいですね!

魅力の溢れるボルボ小型車に今後も期待

VOLVO C70
出典:Volvo Car Group Global Media Newsroom

ボルボが日本で認められたのは、センスの良いワゴンボディで、しかも頑丈である、というところでした。その血縁はしっかりと受け継がれ、今はV60やV90に発展しています。

一方ボルボは小型車にも力をいれており、日本に輸入されるボルボコンパクトバリエーションはどれも魅力的。日本車にサイズが近いこともあり、デザインスタディになることも多いです。

見てきた通り、さまざまなチャレンジを行い、デザインはもちろん、安全性能、環境性能と小さな会社ながらも世界をリードする実力を持つボルボは、今後も楽しみな自動車メーカーです。ボルボV40は一旦は販売終息しますが、きっともうすぐ自動車ショーに次期型が出るに違いありません。

今後の小型ボルボの発展に期待しましょう!

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