ボルボ 直列5気筒ヒストリー 始まりと終わりは時代の必然だった

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ボルボの代名詞といえば安全性。

そしてもう一面は、他メーカーとは違う独特の車作り。

その中でもエンジンは、他メーカーには無い選定を平気でやってのけます。

今回は、ボルボ850からV70最終型まで搭載された、直列5気筒エンジンについて追っていきます。

直列5気筒エンジン

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直列5気筒エンジンは、シリンダーが5つ直列につながるエンジンです。

昔から、ちょっといい車の代名詞といえば、直列6気筒エンジンを想像するはずです。

4サイクルエンジンならクランクシャフトが2回転する間に、吸気、圧縮、燃焼、排気の4つの行程を終わらせるエンジンですが、この2回転の間に6つのシリンダーが動作するのが6気筒エンジン。4つのシリンダーが作動するのが4気筒エンジンです。

同じ2回転の行程でも、6気筒エンジンは4気筒エンジンより2シリンダー分、エンジンの燃焼が多くなります。すなわち、エンジンの燃焼のタイミングが短くなるのですね。

4気筒エンジンが180度クランクシャフトが回るごとに1回燃焼するのに対して、6気筒エンジンは120度回るごとに1回の燃焼です。

燃焼のタイミングが短いので、なめらかなエンジンと感じることでしょう。

しかし、直列6気筒エンジンはエンジンブロックが長くなりますので、縦型配置で車を設計するのが一般的です。横型配置で載せようとすると、車両の幅が大きくなってしまうからです。

そこで、6気筒ほど長くは無いけれども、4気筒よりは回転のなめらかなエンジンが欲しい、という要望から生まれたのが、直列5気筒エンジンというわけです。

直列5気筒エンジンのメリット

ガソリン自動車用エンジンは、1シリンダーあたりの容量の上限は大体600ccと言われています。

これはエンジンが稼動するときに生まれる振動、ノイズや、熱効率から言われている数値です。

ですので、4気筒エンジンは最大2.4リッターあたりが最大となります。

一方5気筒エンジンであれば、同じ2.4リッターエンジンとするならば1シリンダーあたりの容量を480ccにする事で実現できます。

1シリンダーあたりの容量が減ると、エンジンのノイズも軽減しますので、やはりなめらかに感じる高級感のあるエンジンと感じることでしょう。

もちろん6気筒エンジンなら容量は400ccで済みます。さらに6気筒エンジンは、エンジンの発する振動を打ち消す効果があるので、よりなめらかなエンジンと言えるでしょう。

最初の5気筒エンジン

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直列5気筒ガソリンエンジンの世界初搭載は、アウディ100(C2)で、1976年から販売を開始しています。

アウディは100というモデルを、今までより上位の車種と扱うこととしており、エンジンが4気筒では上位車種と認められないと判断します。

そこで直列6気筒エンジンを検討しますが、縦置FFというこだわりの駆動レイアウトでの重量配分や搭載位置に無理があり、直列5気筒エンジンの開発を決定しました。

当時、マルチシリンダーの静寂性、FF車としての車内空間の広さで、アウディはメルセデスベンツのライバル車として認識されるようになったそうですよ。

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ボルボ 850の発表

ボルボ850サイド

そしてボルボです。ボルボが自社開発の直列5気筒エンジンを搭載したのは、1991年に発表された850シリーズ。

この車は240シリーズの後継車種として開発されます。240シリーズは1974年から販売されていて、商品として長寿命を誇りました。

240シリーズがエンジン縦置FRレイアウトだったのに対して、850シリーズはエンジン横置FFレイアウト。ガラッと変わります。

240シリーズでは衝撃吸収ゾーンを設けるのに非常に長いボンネットを持つことに対して、850シリーズでは今につながる短いボンネットを採用。しかし横置きエンジンを搭載することで、衝撃吸収ゾーンを確保することに成功しています。

当時、ボルボは「衝突安全性の向上には横置エンジンが最適」と言っていたそうです。(1992年発表の960シリーズはFRですが・・)

しっかり自動車の安全性を考えた結果から求められたレイアウトだったのですね。

なお、850シリーズは世界最初のサイドエアバッグを装備した自動車でもあります。流石です!

高級車としての必然

ボルボ850コックピット

そして、直列5気筒エンジン。850シリーズは1500kgと、現代の自動車と同じくらいの重量がありました。あわせて、ボルボ自体が高級車へシフトしていった時代でもあります。

1980年代、労働者の離職率の抑制に悩まされたボルボは、ベルトコンベアーでの自動車組み立てを廃止し、セル生産方式と言われる、工員をひとつのグループとして、車の組み立てを全て行う方式を採用します。

ベルトコンベアー方式では工員の労働意欲が下がると言われており、労働環境の改善により高い品質の自動車を作ることができるようになります。

しかし、全ての工員が全ての車を組み立てられるようになる、という事は、それなりに教育費がかかるという事。

この人件費の高騰が引き金で、ボルボは高級車開発に舵を切らざるをえない状況になりました。

自動車の高級化を達成する事、衝突安全性を取り入れる事を目標にすると、FF駆動+直列5気筒は必然だったのかもしれません。

この850シリーズの開発が、後のボルボ車の開発に色濃く反映していきます。

ボルボの直列5気筒エンジン

ポルシェ

さて、この直列5気筒エンジンですが、やはり直列6気筒エンジンがベース。

ポルシェが設計に関与した直列6気筒は、4気筒まで補えるモジュラー設計。このエンジンを搭載したのが、ボルボ960。

この前のモデルは760と言われるのですが、こちらはフランス製6気筒エンジン。一時ボルボはルノーとの合併話も持ち上がっており、960エンジンにルノーも関わっていました。

しかし、縦置きで設計されているであろう直列エンジンを、強引に横置きに直してしまうボルボってすごいです。

V70の発表

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850シリーズの影響は、2代目S60/V70に受け継がれます。

1999年に発表されたS60/V70は、850と同様に直列5気筒エンジンを搭載していました。

同じエンジンでいくつものバリエーションを作るのは今と変わらず、2.4リッター直列5気筒エンジンは、NAの2.4リッターで140psと170psの仕様は、ターボの2.4リッターで200ps、ターボの2.5リッターで最大300psまで発揮します。

丸みを帯びたデザインと大きな荷室で、日本でもかなりの台数が販売されました。

私もV70のクロスカントリーが憧れでした・・あくまで2代目V70のクロスカントリーですが。街中でもよく見かけました。

この頃、ボルボはフォードグループへと売却されています。あとに出るフォード・フォーカスに搭載されていた直列5気筒エンジンは、ボルボが開発に関与していると言われています。

C30/S40/V50の発表

フォードグループへ入った中で開発されたC30/S40/V50は2003年に発表され、当初から直列5気筒エンジンを搭載します。

もともとは直列4気筒エンジン搭載モデルでしたが、フォードグループ内でのプレミアムカー部門に任されていたボルボとしては、同じプラットフォームで開発されるマツダアクセラや、フォードフォーカスとは違う、高級ラインナップを用意する必要がありました。

そこで、小型車にも関わらず直列5気筒エンジンが搭載され、V70と同様の2.4リッター140ps、170psのエンジンが与えられました。

全幅こそ3ナンバー枠を超えますが、トヨタカローラに近いサイズに直列5気筒エンジンが搭載され、5気筒独特の(ちょっと)高いエンジン音は、個性的なキャラクターとして世界で受け入れられます。

しかしモデル末期になると、エントリーモデルを中心に直列4気筒エンジンが搭載され始めます。「DRIVe」と名付けられたモデルは、今の「Drive e」を思わせますね。

ボルボ 直列5気筒の終わり

3代目V70(2007年発表)は、変わらず直列5気筒エンジンを搭載しますが、ここで変化が。

最高級モデルに用意されたのは、なんと横置き直列6気筒エンジン。よりプレミアムな路線としてなのか、何かの気の迷いなのか。

値付けも700万円に突入し、メルセデスベンツやBMWと肩を並べる高級車路線となっています。

しかし、フォードの危機によりボルボは、中国にジーリーグループへ売却されます。ちょうどこの頃、Drive eの構想が発表されるのです。

ボルボV40が2012年に発表されましたが、直列5気筒エンジンは最終的に、T5というスポーツモデルのみに残され、その後Drive eのハイパフォーマンスエンジンに取って代わられます。

2015年にはV70の直列6気筒エンジンは販売中止。V70自体は2017年にV90へとバトンタッチ。こうしてボルボ直列5気筒エンジンの幕が下されました。

Drive eとの差

ボルボエンジン

新開発の4気筒エンジンは2リッターを主軸としており、1シリンダーあたりの容量は500cc。5気筒エンジンとほぼ同等です。

ターボ技術の発達により、昔と違い排気量を増やさなくてもエンジンの出力を増やすことができるようになりました。

エンジンルームの配置、クラッシャブルゾーンの確保などを念頭に考えれば、直列4気筒エンジンにすべて変えるというボルボの方針もわかります。

直列5気筒エンジンを手放したら、ボルボのというブランドに傷がつかない?と思ったりもしますが、

その時代その時代で、安全性を加味しながらも独特なモデルで勝負する。直列5気筒エンジンは、あくまでその延長線上にあっただけだったのかもしれませんね。

今のボルボは、Drive eという世界最高水準のエンジンを持っています。エンジン音のチューニングも素晴らしく、とてもいいエンジンだと断言できます。

しかし、直列5気筒エンジンの独特のエンジン音、忘れられません。

ボルボファンとして、自動車ファンとして、直列5気筒エンジンの復活を望む人も多いのではないでしょうか。

まとめ

結局ボルボの直列5気筒エンジンは、今ちょうど使える直列5気筒エンジンがあって、うまく横置きできたから使ったと感じます。

もしかすると、直列5気筒は辞めたかったのかもしれません。燃費は明らかに4気筒が有利、回転フィールは6気筒が有利。

しかし850が大受けしたので、辞めることができなくなった。

さらに小さな会社の宿命か、親会社が変わる自体が2度も起きています。

そんな小さな会社にも関わらず、ボルボはエンジンラインナップだけは大手並みにラインナップを持っている印象がありました。

そこをDrive eでまとめあげてきた。ようやくボルボのエンジンへの悩みが解消されるのかもしれませんね。

 

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