ハルデックス≠ボルグワーナーAWDを詳しく調べてみた

ボルボ クロスカントリーの記事で、AWDシステムの機能について少し触れましたが、日本語でボルボのAWDシステムについて調べようにも、詳しく触れているサイトは見つかりません。

もちろん自動車のメンテナンス会社やディーラーの整備士の方であれば詳しくわかるのかもしれません。しかし、自動車のカタログに載っていること以上の事はユーザーへ情報開示するわけにはいかない、かもしれませんね。

そこで、aboutVOLVOの持つ(?)WEBリサーチ力を駆使して、ボルボのAWDシステムについてとことん調べてみました。

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Haldex Traction(ハルデックス社)はBorgWarner(ボルグワーナー社)の傘下になっている

まず、ボルボのAWDシステムは「ハルデックス・カップリング」を使っている、という情報はWEB上にも見つかります。

ハルデックス社は現在も存在しますが、ボルグワーナー社はハルデックス社のトラクション部門を買収し、ボルグワーナーのヨーロッパ支店としています。

Auburn Hills, Michigan, February 1, 2011 – Global powertrain supplier BorgWarner has completed its acquisition of the Traction Systems division of Haldex Group. From production facilities in Sweden,

Mexico and Hungary, Haldex Traction Systems supplies its leading front-wheel drive based all-wheel drive systems for passenger car and crossover vehicles.

Customers include Volkswagen, Audi, Skoda, Seat, Lamborghini, Bugatti, Volvo, Land Rover, Saab and GM.

出典:BORGWARNER社 https://www.borgwarner.com/

翻訳しますと。。。

2011年2月1日、ミシガン州オーバーンヒルズ – グローバルなパワートレインサプライヤーBorgWarnerは、Haldex GroupのTraction Systems部門の買収を完了しました。

スウェーデン、メキシコ、ハンガリーの生産拠点から、Haldex Traction Systemsは、乗用車およびクロスオーバー車用の主要な前輪駆動ベースの全輪駆動システムを提供しています。

顧客には、フォルクスワーゲン、アウディ、シュコダ、シート、ランボルギーニ、ブガッティ、ボルボ、ランドローバー、サーブ、GMが含まれます。

となります。ハルデックスのAWDシステムを使っている、という情報は、ボルグワーナー社に買い取られたあともハルデックスという会社がある事によって、すこしややこしくしている感じがします。

現在はボルグワーナー社からの供給ですが、ボルボのAWDシステムは昔から、同じ会社(部門)から供給を受けているという事は間違いないようです。

第5世代AWDがどんなシステムか

次にAWDシステムについてです。

メーカーがボルグワーナー社製とわかれば、ボルグワーナー社のプレスリリースを読みあさる事でおおよその情報は得られそうなのですが、第5世代AWDの技術記事は現れません。

一番詳しく説明しているプレスリリースでは、2013年3月に北極圏でデモンストレーションがあった、というもの。この時にはほぼ完成していたようです。

A new electro-hydraulic clutch actuator uses a unique centrifugal overflow valve design to accurately distribute power between the front and rear axles,

eliminating the need for an accumulator, solenoid valve and filter. An integrated electronic control unit calculates and delivers pre-emptive and immediate response with high torque accuracy.

To further reduce parasitic losses and improve fuel economy,

a disconnect clutch system also allows the decoupling of the entire secondary driveline when the AWD function is not needed.

出典:BORGWARNER社 https://www.borgwarner.com/

翻訳しますと。。。

新しい電気油圧式クラッチアクチュエータは、ユニークな遠心オーバーフローバルブ設計を使用して、フロントとリアのアクスル間で正確に動力を分配するため、アキュムレータ、ソレノイドバルブ、およびフィルタが不要になります。

統合された電子制御ユニットが、高いトルク精度で先制的かつ即時の応答を計算して配信します。

損失をさらに減らし、燃費を改善するために、AWD機能が不要な場合は、切断クラッチシステムで2次ドライブライン全体を切り離すこともできます。

となります。遠心オーバーフローバルブ設計により、様々な部品が不要に。さらにAWD機能が不要な場合は切り離しも可能となっていますね。

AWDは燃費が悪いといいますから、少しでも燃費が良くなる仕組みが入ることはとても良いことです。

また、他のプレスリリースから、第5世代AWDシステムを最初に搭載したのはフォルクスワーゲンのゴルフ(GTI 4MOTION)と見られること、AWDシステムはスウェーデンの工場で作られていること、という事です。スウェーデンの工場=元Haldex Tractionと見ていいでしょう。

 

さて、AWDシステムの概要は、これ以上はボルグワーナー社からは情報が出ない事になります。

ならばどこから情報を仕入れるか。

こういう時は、搭載車の試乗記から確認しましょう。

フォルクスワーゲン ゴルフRの試乗記

VWゴルフ 4MOTIONシフト

4MOTION搭載のGOLF Rもやはり、小型車のベンチマークである。

出典:フォルクスワーゲン https://www.volkswagen.co.jp/ja/

モーターファン紙にある、ゴルフRの4MOTIONに関する記事です。

ゴルフRが使うハルデックス・カップリングは、第五世代と呼ばれるタイプ。モーターで6ピストンのアキシャルポンプを回転させて油圧を得、ピストンを作動させてクラッチの締結・解放を制御する仕組み。

アキュムレーターを廃して軽量化したのが第五世代の特徴だ。

ハルデックス5は、理論上100:0(完全FF)〜0:100(完全FR)の駆動力配分が可能なシステムだが、実際の雪上では前輪のみ、あるいは後輪のみからの強い駆動力は感じられなかった。

直結AWDらしいトラクション感は感じられたものの、それにともなって操舵フィーリングにやや違和感が現れてしまった。

出典:Motor-Fan TECH https://motor-fan.jp/

第4世代に対して軽量化がなされ、理論上100:0(完全FF)〜0:100(完全FR)の駆動分配が可能、となっています。

電子制御による油圧式クラッチによりトルク配分が制御され、理論上は後輪駆動車と同等の動きができるようですね。

ちなみにゴルフRのエンジン性能は、310ps(228kW)/40.8kgm(400Nm)。第5世代AWDシステムが、かなり大きなトルクにも耐えられることがわかります。

もうひとつ、記事を紹介します。

なんちゃって四駆じゃない

第4世代では最大で50:50だったところ、0:100を実現したのも第5世代の特徴。

また、かつてはカップリングにビスカスを使用していて、前輪が滑り出してから遅れて後輪に駆動力を伝えていたので、「なんちゃって四駆」などと呼ばれたりしたが、今では滑りを予知して事前に後輪にも駆動力を伝達している。

出典:ベストカーWEB https://bestcarweb.jp/

ベストカーWEBの「輸入車の4WDの性能はいかに?」という記事です。

滑りを予知して事前に後輪にも駆動力を伝達している、となっていますので、プレチャージ式を採用していると見ていいでしょう。

トルクの分配はやはりインパクトが強く、実際に安定して走るには必要の無い50:50〜0:100(FR)への対応は、どのハルデックス カップリングの記事を見ても必ず記載があります。

フロントエンジン/フロントドライブ(FF)の自動車は、トルク配分は重量配分と同等か多少前後するだけで済みます。FF車の重量配分はおおよそ70:30〜60:40ですから、50:50あるだけでも安全性には十分です。

そこへ最大0:100なんて言われれば、車好きからは後輪駆動っぽい挙動が楽しめる、なんてことを期待させますよね。

制御パターンの登録/切り替えができる

システムが自動的に判断し、全てのホイールに適正なトルクを分配する、という文言は、ボルボのカタログにありました。

また、ドライブモードセッティング機能によって、AWD機能の制御を変えることができるようになっています。メーカーや出版社の記事ではないのでここでは参照しませんが、おおよそ3つのドライブモードを記憶することができるようで、AWDシステムが単独でトルク配分の制御が可能なようです。

アウディはこのAWDシステムを採用する際、ゴルフとは別のモードセティングをしているようです。(クアトロではないよ。)

第5世代AWDはこんなシステムだ

ボルボXC90のフロント

では、「ボルボ 第5世代AWDシステム」=「ボルグワーナー 第5世代AWDシステム」の、おおよそのAWD機能をまとめますと。。。

  • 電子制御油圧式多板クラッチによるAWDシステム
  • トルク配分比率は100:0〜0:100まで可能
  • トルク許容量は400Nm以上(XC90 D5で480Nmでの採用例あり)
  • あらかじめ後輪へトルクを伝達しておくプレチャージ式だが不要な場合はカットできて燃費に有利
  • ECUによる完全制御 内部ソフトはメーカー毎に書き換え可能

という事がわかりました!

最初はXC90への搭載から

ボルグワーナー社のプレスリリースには、XC90から始まるSPAプラットフォーム向けに提供、となっていました。

また、XC40への搭載や、吉利汽車のLink&CoのSUVへの搭載も発表されています。第5世代AWDは、2019年4月現在はV40を除く全てのボルボに搭載されていると見てよいでしょう。

ボルボのカタログを見ると、第5世代AWD搭載車には「ボルボ第5世代AWD」という文言があることから、ボルボは第4世代と第5世代は明確に違うことをアピールしていますね。

ボルボのAWDの味付けは

基本的にはスポーツ走行を行うAWDではありません。

AWDの機能を使い適切なトルク配分は取りますが、車をより安定志向へ操作する各種デバイス(トラクションコントロール)などが付いています。

そもそも、ボルボは今やFFプラットフォームしか持たないメーカーです。

そして安全志向であり、フロントの2輪とスタビリティコントロールなどで横滑り防止を計っています。すでにできるだけ「滑らない」機能はついている。

ではどうしてAWDが必要かといえば、スウェーデンでは多い雪道での「駆動力」の確保。駆動さえ出来てしまえば、車の挙動をコントロールする事はすでにできるわけですよね。

適切な駆動さえできてしまえば良いわけで、だからこそコストパフォーマンスの高いサプライヤーのAWDシステムを採用しているのです。

ですので、ボルボのAWD性能は安全志向の平凡なAWDと考えて良いでしょう。そこにあるように感じないことが、一番の安全に繋がるのです。

などという私の主張通りの試乗記記事を見つけましたので、ご紹介します。

無駄な空転は最小限で、4つのタイヤが瞬時にトラクションを最適に配分してくれる。本当のところは、ドライバーはただハンドルを握ってアクセルペダルを踏んでいるだけなのだけれど。

そんなシーンが脳裏に浮かぶほどに、XC40の挙動は落ち着き払っていた。

出典:モーターマガジン https://web.motormagazine.co.jp/

さすがのボルボXC40。そしてスウェーデンの自動車メーカーボルボ。大雪の中を物ともせずに走行できる。立派なものですね!

ファンなドライブも可能 かもしれない

雪道のイメージ

しかし、どうしても後輪駆動的な動きが欲しい、という人もいるでしょう。

(ボルボでの経験が無いのでなんとも言えませんが、前輪にトラクションがかからない感覚=FR的挙動はまた、車が面白いと思う要因でもありますよね。)

そこでオススメしたいのは、「ポールスターパフォーマンスパッケージ」です。

The optimisation software, developed by Volvo Car Group’s new electric performance brand Polestar,

increases the amount and frequency of torque distributed to the rear wheels, improving steering with enhanced turn-in, better control and engagement when cornering, and improved traction when pulling away, delivering a more engaging drive.

出典:Volvo Global News Room https://www.media.volvocars.com/

この記事は、Volvo Global News Room で発表された、ポールスターによるAWD制御システムの開発についての記載です。

なんと、日本では発表されていません。

翻訳すると。。。

ボルボ・カー・グループの新しい電動ブランドPolestarによって開発された最適化ソフトウェアは、後輪に分配されるトルクの量と頻度を高め、ターンインの向上、コーナリング時のコントロールとエンゲージメント、加速時のトラクションを向上させ、より魅力的なドライブを提供します。

となります。

後輪に分配されるトルクの量と頻度を高め。。。とありますから、ポールスターパフォーマンスパッケージを導入するまでは、後輪へのトルク分配は必要最小限ですよ、と言っているものです。

(なお、このシステムはドライブモードの変更か、スタビリティコントロールの解除で有効になります。)

ボルボ機械式AWD 本当のまとめ

以上で、ボルボのAWDについての調査は終わりです。

ボルボの全ての車を、いつでも乗る事ができるわけではないので、あらゆる記事を参照しながら正確性を突き詰めていき、皆さんへお伝えしているわけです。

今回は記事の出典は1つの機能につき1つに限定していますが、基本的には2つ以上同じことを言っている事を確認してから伝えるようにしています。

さてさてさて。

AWDについてのネタはおおよそ集まりましたので、ボルボの機械式AWDについて、最後にまとめて終わりにしましょう。

 

ボルボのAWDは、プラグインハイブリッド技術によるモーターで後輪を稼働する電気式と、従来通りカップリングを用いる機械式があります。

機械式AWDシステムは、スウェーデンのハルデックストラクションを吸収したボルグワーナー社より提供をうける第5世代のもの。専用ECUによる電気制御式のAWDシステムは、油圧多板クラッチを使用してトルク配分を100:0の完全FFから0:100の完全FRまででコントロールができ、さすが最新式と言える優秀なシステムです。

AWDが不要なタイミングではシステムを切り離し燃費の改善に寄与する他、必要な時にはあらかじめ後輪にもトルクを分配しておくプレチャージ機構も入っています。

この第5世代AWDシステムはゴルフの4MOTIONに代表される世界中の車に搭載され、実績もあり信頼できるAWDシステムです。

もしVW 4MOTIONのようなパフォーマンスが欲しければ、ポールスターパフォーマンスパッケージがその欲求に応えてくれる事でしょう。

 

という感じで、見事にまとまりました!よね!?

私の知らないシステムや、実際の雪道/ぬかるみ道での使用感など、教えていただけると嬉しいです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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