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ボルボの電気自動車化戦略の正しさを世界のLCA評価と共に検証する

2019年5月15日、ボルボ・カー・グループはCATLおよびLG化学とのバッテリー供給契約を発表しました。

今後10年間の自動車用バッテリーの供給を確かなものにし、2025年までに自動車の電動化比率を50%にすることとしたコミットメントの達成に、大きく前進することとなります。ボルボが望む電動化戦略が進むことで、私たちボルボファンは将来ボルボが安定して存在することに、安心して自動車ライフを過ごす事ができます。

一方で、自動車の環境負荷に対する要望は年々増しており、自動車のCO2排出は、自動車の製造、燃料の生成、自動車の廃棄に至るまでをひとつとし、燃費のみならず総合的に考える世の中に変わりつつあります。

ボルボの戦略の正しさを検証するとともに、スウェーデンから遠い日本において、ボルボを所有する我々ができることを考えてみます。

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電気自動車とエンジン自動車との比較

VW ティグアン
出典:フォルクスワーゲン

フォルクスワーゲンのLCA評価

2019年4月26日、フォルクスワーゲンは自社の自動車開発の将来像について、証明済みライフサイクルアシスメント(LCA)を用いたCO2削減の評価を行いました。

同一モデルに異なるパワートレインが搭載されている場合、バッテリー式電気自動車のカーボン フットプリントは、既に同等の内燃エンジン搭載車よりも優れていることが証明されました。さらに、電気自動車は、製品ライフサイクルのすべての段階において、より多くのCO2削減の可能性があります。

アセスメントの結果、現行の「Golf TDI」(ディーゼル)は、ライフサイクル全体を通した排出量の平均値が 140g CO2/kmですが、「e-Golf(e-ゴルフ)」は119g CO2/kmです。

出典:フォルクスワーゲン

この発表によると、電気自動車とディーゼル車を「走行20万km」した場合、ディーゼルエンジンは1kmあたり140gのCO2を排出し、電気自動車は1kmあたり119gのCO2を排出します。

日本における「走行20万km」は、特に都心にいると走破できない可能性がありますが、それよりも電気自動車のCO2排出が多いように見えます。これは製造工程で排出されるCO2排出を含んでいるからです。

電気自動車のCO2排出量の大部分は、その生産段階で発生します。LCAによると、ディーゼル車の生産段階におけるCO2 排出量は29g CO2/kmですが、同等の電気自動車では57g CO2/kmであることが判明しています。その主な原因は、バッテリーの製造と原材料の複雑な採取工程によるものです。

出典:フォルクスワーゲン

このような説明のとおり、電気自動車はバッテリーの生成に多くのCO2排出がされるとなっています。

単純計算でCO2の排出を「自動車の製造」と「燃料の使用」とした場合、

ディーゼルエンジンでいうと、140g CO2/kmより生産段階での29g CO2/kmをマイナスすると、20万km走行時の燃料由来のCO2排出量は111g CO2/km、

電気自動車では、119g CO2/kmより生産段階での57g CO2/kmをマイナスすると、20万km走行時の燃料由来のCO2排出量は62g CO2/kmとなり、この数値から以下のような表を導き出せます。

ディーゼル自動車と電気自動車の5万km毎のCO2排出量(VW)

燃料使用量生涯CO2排出量
ディーゼル電気ディーゼル電気
走行 20万km11162140119
走行 15万km8448113105
走行 10万km56318588
走行 5万km28165773

この表を見る限り、現在の状況では生涯10万kmを走行しなくては、電気自動車によるCO2排出量の低減効果は見られないことになります。

図に起こすと以下の通りです。

ディーゼル車とEVの生涯CO2排出量

走行距離を稼がないと、生涯CO2の排出量を下げる事ができない事がわかりますね。

また、月刊誌ベストカーのWEB版では、マツダとフォルクスワーゲンの数値を用いた独自解析で、以下の通りの見解を示しています。

日本市場でのLCAにおけるCO2排出量の評価は、約11.5万kmまではバッテリーの生産時CO2が多いBEVのほうが、ディーゼルやガソリン車よりも排出量が多く、そこからは電費のよさでBEVが逆転するが、16万kmでリチウムイオンバッテリーを交換するため、そこからは再度逆転してエンジン車のほうが排出量が少なくなるのだ。

出典:ベストカーWEB

つまり、11.5万kmを超えた時点で電気自動車の生涯CO2排出量は優位になるが、リチウムイオンバッテリーを16万km走行時に交換する為、再度エンジン車のCO2排出量は少なくなる、と言っています。

電気自動車では、生涯CO2排出量は僅差どころか、下手をすればエンジン自動車に負けてしまう可能性が高いと言えます。それでも各自動車会社は、バッテリーを主体とした自動車へ転換しようと試みています。その理由とはいったい何でしょうか。

将来性のあるエネルギーへの転換

トヨタプリウスのフロントマスク
出典:トヨタ自動車

これは一言でいえば「脱化石燃料」です。化石燃料を使用することにより、CO2は止め処なく排出されます。また、化石燃料は中東地域から輸出され、世界の富があつまる地域になります。脱化石燃料を達成することは、各国のエネルギー戦略を大幅に見直す事ができ、しかもCO2排出という正義まで生み出す事ができるのです。

その為、現在は電気自動車の生産や充電用電気の生成におけるCO2排出を低減させようと、各社技術開発を急いでいるところです。

フォルクスワーゲンの場合

フォルク スワーゲンのザルツギッター工場では現在、リサイクル用の試験用プラントを建設中です。このプラントでは、 使用済みバッテリー、すなわち経年劣化により十分なエネルギーを蓄えられなくなったバッテリーから、 新しいバッテリーのカソード用の原材料(ブラックパウダー)を生成します。これにより、最大25%のCO2削減効果が得られます。

出典:フォルクスワーゲン

フォルクスワーゲンでは、バッテリーの生成で排出されるCO2を削減しようと、リサイクルを計画中。最大25%のCO2削減効果が得られるとしています。

トヨタの場合

水素は様々な一次エネルギーから、各地域の事情に合った方法で製造できます。また再生可能エネルギーの普及にも大きな役割を担っています。太陽光発電や風力発電は自然条件に左右されるため、発電の安定供給の面や、長時間・大量の蓄電に課題があります。しかしこれらの電力を蓄電池より体積エネルギー密度の高い水素に変換して備蓄すれば、これらの課題の解決につながります。

出典:トヨタ自動車 

トヨタは将来のエネルギーを「水素エネルギー」としています。太陽光や風力発電による自然エネルギーを使用し、水素として蓄積しようという考えです。

日産の場合

EVのバッテリーは、蓄電池としての役割を担うことで、太陽光や風力発電など出力が安定しない再生可能エネルギーの導入をサポートすることができます。日産は、CO2排出量の低減や再生可能エネルギーへの転換に貢献するEVは、クルマを取り巻く社会全体の低炭素化には不可欠だと考えています。

出典:日産自動車

日産はトヨタとは違い、電気自動車のバッテリーがあるからこそ「不安定な自然エネルギー」を蓄電する事ができるとしています。この考え方は、自動車自身での発電の可能性を感じる事ができます。

脱石油の達成が鍵

工場の風景

ここまで見てくると、脱化石燃料を達成する為、自動車の製造段階や電気の製造段階でのCO2排出を抑制しようという動きが見て取れます。

電気自動車は充電することでエネルギーを得る事ができますが、これは発電所でCO2を排出しているので完全にクリーンではない、という考え方が自動車会社に浸透している事がわかります。LCAという考え方により、電気自動車が完全にゼロエミッションとは言えないと気づいた事は、将来の自動車社会への大きな前進と言えます。

結局のところ、再生可能自然エネルギーを効率よく採取できるようにならなくては、電気自動車の将来も危ういと言えなくもないですね。各国、各自動車会社の努力により達成されることを期待したいと思います。

しかし、再生可能エネルギーが進化するとともに、必ず石油は値下がりするでしょう。先物取引として、投機目的として、そして石油生産国の利益として、石油が再生可能エネルギーに対抗してくることが考えられます。その時代をどのように乗り切るかが脱石油達成としての、ひとつのポイントだと考えられます。

では、脱石油を達成するために我々が選べる自動車は?ボルボの方向性は合っているのでしょうか?

ボルボの自動車開発戦略

出典:Volvo Car Group Global Media Newsroom

最初に述べたように、ボルボは2025年に電動化比率を50%を目指しています。

実は、LCAの発展にはボルボが関わっています。スウェーデンの環境研究所とボルボは、1996年に環境影響の経済評価手法を開発しています。昨今のボルボからはLCAに関わる発表が無いのは残念ですが、電気自動車のシフトはボルボとしては避けて通れない道なのでしょう。

電気自動車ポールスター

開発にお金のかかる電気自動車を、まずはスペシャリティとして販売する。ポールスター1、ポールスター2の販売目的は技術開発と利益の創出でしょう。

日本のマツダや三菱よりも生産規模の少ないボルボが、テスラモーターに次ぐスペシャリティ電気自動車メーカーとして進出したことは、ボルボファンとしては誇りに思うべきです。ここで開発されたテクノロジーは、やがて全てのボルボへ採用されることでしょう。

ポールスター2の価格は500万円〜750万円。現実味を帯びた価格設定となっています。日本での販売はありませんが、CMAプラットフォームで開発されたポールスター2は、その能力を次期V40に受け継ぐ可能性を秘めています。楽しみで仕方がありませんね。

プラグインハイブリッド TwinEngine

バッテリーの製造に多くのCO2を排出する。そうであるならば、今の時点では大きなバッテリーは搭載せずに、短距離走行のEV化という「おいしいところ」だけを狙うプラグインハイブリッド。

足元の情勢をよく考えて作られた事がよくわかります。そして戦略も間違えていません。強いて言えば高価なところが最大のネックですが、これも今回のバッテリー提携発表で改善される可能性があります。

日本でのプラグインハイブリッド車の最安価格は、V60 T6 TwinEngine Momentumの650万円です。補助金があるにせよ、あと50万円〜100万円を落とさないと、積極的に買われる事はないでしょう。

Drive-E ディーゼルエンジン

出典:Volvo Car Group Global Media Newsroom

早くからディーゼルエンジン撤退を決めたボルボですが、2019年に最終開発型としてマイルドハイブリッド統合ディーゼルエンジンを発売します。

実はディーゼルエンジンは、バイオディーゼルという選択肢を残しています。これは電気をバッテリーに蓄電するのではなく、別のエネルギーに置き換えようとするトヨタの水素エネルギーに似た考え方になりますが、どちらも自然エネルギーによって生成する事が必要になります。

いま、ボルボはドイツ各社がディーゼルを捨てないことに憤りを感じていることでしょう。パワーソースを複数持つ事は自動車会社の存続の中では大事な事です。価格差は通常のディーゼル+10万円ほどのようですから、購入しやすいクリーンエンジンと言えます。小さな会社の英断を期待していましょう。

Drive-E ガソリンエンジン

脱石油を考えた場合、今まで主役だったガソリンエンジンは無くなる運命にありますが、これから10年でいきなりエネルギー改革が起こる可能性は低いです。また、ガソリンエンジンにも改善の余地があり、エネルギー効率を60%まで持っていける可能性があります。

すると、火力発電所と同等のエネルギー効率になります。Drive-Eエンジンは他社に燃費で越されつつあります。次世代Drive-Eの開発を待ちましょう。

ボルボのクリーンエネルギー自動車と私たちの選択

森のイメージ

着実に脱石油エネルギーへ向かっているボルボ。その主軸はやはり電気自動車です。

しかし、迷いもあります。プラグインハイブリッド+ガソリンというラインナップを持ちつつ、ディーゼル+マイルドハイブリッドのラインナップを付け加えようとしています。

電気自動車を主軸に考えるとしても、それまでは化石燃料で過ごさねばなりません。電気自動車とプラグインハイブリッドで行くのか、電気自動車とディーゼル+マイルドハイブリッドをミックスするのか、この3ミックスで行くのか。

日本ではディーゼルエンジンは将来が無い、リセールが下がると言われていますが、まだまだ未来があります。パワーソースがクリーンエネルギーかどうかを考えるのは消費者であり、インポーターの仕事ではありません。自社のエンジンのリセールが下がるなどと自ら宣伝することは、将来のボルボのブランド価値にも響く可能性があり決して許されることではありません。

本国ボルボが正しいとするエネルギー戦略をよく考え、私たちも次期ボルボを購入する際には、その施策を後押しできるような自動車選びができるといいですね。

 

さて、最後におまけです。日本とスウェーデンでのTwinEngineの価格差を調査してみました。

日本でもスウェーデンでも、150万円近い差額があります。施策を後押しできるように、買いやすいプラグインハイブリッドの提供を望みたいですね。楽しみにしていましょう。。。

ちなみに、日本ではT6 TwinEngineは多額の補助金が出るようです。(2019年6月時点ではCEV補助金20万円と、自動車取得税免除など)

スウェーデン価格日本円換算日本モデル価格
V60 T5 Momentum379,4004,401,4004,620,370
V60 T6 TwinEngine Momentum517,5006,003,0006,101,852
差額138,1001,601,9601,481,482

(1円=11.6スウェーデン・クローネで計算)

(シティセーフティサラウンドとシティウィーブ内装を選択)

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